日本のインターネット:再生へのアプローチ


もはや2流としか評価できない日本のインターネットインフラ産業。これは、ネットインフラ産業の経営側が2流で良いという舵取りをしている結果です。しかし、ネットインフラに関わっている現場としては面白くないわけで、現状打破に向けて現場が取れるアプローチを考えてみます。

継続的なベンチマーキングと意識づけ

日本のネットインフラがここまで落ち込んだ最大の理由は、多くの日本人が漫然と日本のネットインフラは素晴らしいと勘違いしていることです。つまり、日本のネットインフラはもはや2流であり、かなり頑張らないといけないという意識づけが必要です。そのため、各種指標について継続的な調査と公開が必要です。

また、各種指標については、その時々に合わせ取捨選択が必要です。たとえば、「光ファイバの普及率」は、5Gなどのモバイルブロードバンドが普及している現在、はもはや重要指標ではありません。

OTT・ユーザ視点での評価

ネットの性能評価としては、ダウンロード速度やレイテンシの平均値に対する評価が主流です。一方、OTT側ではユーザの視聴体験等をQoEとして計測しています。また、計測値の評価についても平均値ではなく、悪QoEの出現割合で評価しています。

このようなOTT・ユーザ視点での評価を行えば、平均速度等で劣る日本のネットインフラも、もっと良いポジションが取れる可能性があります。

NTT IOWN

NTTは、IOWNに対しかなりの資金を投入し頑張っています。ともかくデバイスについては、世界をリードしているようなので、日本の現場としても全面サポートすべきだと思います。

ただし、NTTは、日本のネットインフラを2流にした最大の戦犯であり、IOWNについても具体的な市場規模が発表されておらず、デバイス技術を超えたミドルウェア面についての優位性も不明です。無駄な研究投資を行わせないように厳しい目でチェックする必要があります。

NHK CDN

YouTubeやNetflixのような大手OTTでは、メディア配信用の独自CDNを構築・運用しています。そして、メディア配信への特化により、高度な配信制御を可能としています。また、英国BBCでも独自のCDNを運用しています。

一方、NHKは、動画配信が本来業務になり、独自CDNを構築できる下地が整っています。そして、放送先進国である英国ではOfcom(英国情報通信庁)が「放送はオワコンであり通信への移行も議論すべき」というレポートを出すなど放送事業向けCDNの必要性が上がっています。

メディア専用CDNは、一般Web用CDNよりも必要機能が少なく、一般CDNに比べて容易に実装できます。このような狭いマーケットであれば、今からでも国際マーケットに通用するサービスを作り出すことも可能です。少なくとも、メディア配信に必須となるマルチCDN制御とQoE計測ASPについての国産化は目指したいところですし、頑張れば可能です。

IETF

日本は、IETFで議論されているInternet標準技術に対しての貢献が低い(ただ乗り)状況が続いています。IETFへの貢献のメインは以下の二つです:

  • ドラフトやRFCドキュメントの著者となること
  • WGの議長として技術議論の調整をすること

WG議長については、該当分野でのリーダシップと調整能力があれば誰でもなれます。エンジニア方面の方にはぜひチャレンジしてもらいたいグローバル貢献です。また、現在、国内からは以下の4組織が議長を輩出しています:

  • ソフトバンク、慶應大学、アラクサラネットワークス、DigiCert

一方、以下の著名団体では議長を出していません。晒上げましょう。

  • 日本を代表する通信企業
    • NTT、KDDI
  • 国立大学
    • 東京大学、京都大学、東工大等
  • 公的研究機関
    • NICT

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