国内CDN事業の今後について


Web系CDN

現在のWeb用CDNは、単純な配信ではなく、CMSと連携したAPI操作やセキュリティ対応など情報システムの一部として高度な機能が必要となります。それらの(例えば国内トップシェアのCloudfront完全互換CDN)実装には、かなりの工数が必要で、国内しかマーケットを持たないCDN事業者には困難です(開発原資が無い)。

そのため、基本的なアプローチとしては、機能面には目をつむり安さを追求するしかありません(これは典型的な国内クラウド事業者のアプローチです)。しかし、安さ追求にはある程度のサービス規模が必要であり、強固な販売チャネルを確立する必要があります。

そのため、国内小規模CDNの生き残りは困難であり、海外大手CDNの代理販売への切り替えが増えると思われます。しかし、Akamai等の大手CDNは既に国内販売チャネルが確立しており新規に上位代理店になることは困難です。一方、Cloudflareのような新興CDNは、国内販売チャネルの拡大に精力的です。

動画系CDN

一方、動画系CDNについては、Webに比べると必要な機能が単純です。ただし、配信単価が厳しいためWeb系以上にサービス規模が必要となります。逆に言うと配信単価さえクリアできれば、比較的参入しやすいマーケットであると言えます。実際、北米FASTについてはAkamaiやCloudfrontではなく2ndレベルのCDNが配信を行っています。

また、放送から通信への媒体移行もすすんでおり、国策的に動画配信系CDNについては内資でまわすという流れもあります。実際、英国については、BBCが自社CDN(BIDI)を独自開発し運用を行っています。

また、動画系の場合、CDNの上位サービスとしてマルチCDNやQoE管理などが必要となります。これらについては、比較的実装が容易であるため、自社開発の可能性もあります。

  • 動画用マルチCDN:プレイヤー側のみの実装(プレイヤーサイド・マルチCDN)も可能です。この場合の実装コストはかなり軽くなります。
  • QoE管理:プレイヤー側は、CMCD(Common Media Client Data)のような標準化技術を利用し、バックエンド側はビックデータ処理の実装でシステム構築可能です

Edge Computing系

CDN全体でEdge Computingが流行しています。ただし、Akamaiを除くCDN事業者のEdge Computingは、国内コンピューティング拠点が多い事業者でも5か所程度しかなく、Edgeと呼べる状況ではありません。Edgeと呼ぶからには各県単位でコンピューティング拠点を配置して欲しい所です。また、Akamaiについても拠点数は187ありますが、都市数でみると26都市にしか拠点がなく、全都道府県制覇はできていません。

国内企業でも全都道府県に拠点を置くようなサービス展開ができれば、外資サービスに勝てる可能性があります。課題としては

  • 実装方法:Off the shelfなソリューションがないため、実装ハードルが高いです
  • 市場規模:現状、低遅延コンピューティング市場は限られています

参考


コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です