地方自治体サーベイ2019 を公開しました。それに対し、地方自治体におけるCDN導入には以下のような課題があるというような記事を見かけます:
- 設定が難しい
- CDN料金が高い
しかし、これは誤解(誤謬)です。今回は、これら誤解を解いていきたいと思います。
設定
地方自治体のような個人情報を含まないWebサイトの場合、CDN設定で、すべてのファイルに対するTTL(キャッシュの保持時間)を30秒程度に設定するだけでOKです。この設定で以下の2つがバランスします:
- 情報の最新性維持
- 「TTLを30秒に設定」=「古い情報が30秒配信され続ける」という意味です。30秒程度の情報の遅れは問題ないと思われます。
- オリジンサーバの負荷低減
- TTLを30秒程度に設定するだけで(ざっくりとした経験則としては)ピーク時のWebサーバ負荷が1/30程度まで下がります。また、Webサーバのピーク負荷がまだ高い場合は、TTLをさらに (3分程度) 大きくすると1/100程度まで下げることも可能です。
料金
10万人程度の自治体でCDN利用料は月額1~2万円程度です。背景となる経済条件は以下です:
- 月間CDN配信料:1,000GB
- ページあたり5MBで、 月間20万PVに相当します。
- 配信単価:配信GB単価10~20円
- 国内トップシェアのCDNであるAmazon Cloudfront(CDN単価は相場の倍程度。コンビニ的に大抵の機能を持ち契約もオンラインサインアップで使い始めやすいが、料金としては高い)でも、単価20円/GB程度(完全従量料金)です。他の国内CDN事業者などにすれば、半額程度の単価になります。
予算が固定されている自治体では、従量制は難しいという面もありますが、月額1~2万円レベルの変動費用であれば、大きな問題にはならないと思います。、
また、JストリームはCDNの地方公共団体向けプランを発表しており、その料金は配信量ではなく人口ベースで決まります:
- CDNアカウント発行費用:50,000円(税抜)
- 月額利用料:5,000円/人口10万人(税抜)
このプランの場合、1か月のデータ流量は500GBまでという制限ありますが、年間での契約も可能であり、月次費用を平坦化することができます。
CDN事業者と地方自治体
前述のように、10万人程度の地方自治体(月間1,000GB程度の配信量)のCDN料金は1万円程度(月額)です。そのため、CDN事業者にとっては、あまり手間をかけたくない(細かなサポートをしたくない)お客さんという事になります。CDN事業者としては、県単位(人口100万人)ぐらいまで契約規模を上げ (契約単位も1年とし) 、年間100~200万円ぐらいの契約になったほうが、いろいろ契約前サポートもやりやすいです。逆に言うと、県単位でCDNを導入し、災害情報等をスムーズに配信しても、人口100万人程度の県であれば、CDN利用料は年間100~200万円程度です。
逆に、地方自治体が CDN事業者と付き合う時のTipsとしては以下のような事項があります:
- 単価交渉はできる
- 大手CDN事業者であれば、CDN配信の原価は1円/GB程度です。年間契約額がある程度になれば、契約形態や単価の交渉はいろいろできます。
- サポート交渉は難しい
- 案件規模が小さいと、(CDN事業者は)あまりサポートしてくれません。CDN設定等については、CDNを使いこなしているWeb業者等に任せるか、サポート費用を別建てで支払う必要があります。