通信と放送の融合について日本政府での議論は規制改革推進会議(内閣府)で行われています。その答申が2020年7月2日に発表されました。ただし、この会議では広範囲にわたる議論が行われているため、放送と通信の融合部分のみを抜粋します。
(6) 放送を巡る規制改革
- ア 放送事業者によるインターネット配信の推進
- a NHKによるインターネット常時同時配信等について、地域情報の発信の重要性に鑑み、地方向け番組の提供の計画を具体化する等、現行の全国配信の枠組みのもと、地方向け放送番組の配信を積極的に行うよう、NHKに対して促す。【令和2年度措置】
- b NHKが保有する映像資産について、無料配信される番組数及び有料配信される番組数や配信対象の選定基準や考え方を明確化し公表することに加え、無料配信される番組を充実させる取組を、NHKに対して促す。【令和2年度措置】
- c 新型コロナウイルス感染症への対応として、教育機会の確保に資する取組として、例えば、NHKが新たに著作権処理を必要としない映像資産について、「NHK for school」へのコンテンツのダウンロード機能を追加する等のニーズを踏まえた提供に向けた取組の実施や、観光等の経済回復に資する映像材の積極的な充実を、NHKに対して促す。【令和2年度措置】
- イ ローカル局の経営基盤強化とNHKによる協力の在り方
- a 放送業界全体のネット進出を後押しする観点から、民放ローカル局のネット進出を円滑化するため、民放ローカル局のインターネット配信基盤を含む要望を把握し、NHKに対し、必要な協力を促す。【令和2年度措置】
- b 関係者からの具体的な要望を把握し、ローカル局の経営基盤の在り方について、放送事業者の経営の自由度を高める規制・制度改革を資本に関する取扱いを含め、幅広く検討する。【令和2年度検討開始、早期に結論】
- c 関係者からの具体的な要望を把握し、ローカル局の収益力向上及びコスト削減を促す取組が強化されるよう、既存の放送業務に関わる設備の共用化を更に進めるために必要な方策を検討する。【令和2年度検討開始、早期に結論】
- ウ インターネットにおける放送コンテンツの円滑な流通に向けた制度整備
- a 1.放送のインターネット同時配信等、2.拡大集中許諾制度等、3.孤児著作物の裁定制度及び協議が整わない場合の裁定制度の3点について、総務省は、ローカル局を含めた放送業界としての現状の課題とその原因を基に、要望を具体的に取りまとめる。その上で、総務省とりまとめ案について、総務省及び文化庁が共同して、アウトサイダーを含む権利者や関係者等から意見聴取を行った上で、1、2、3のそれぞれについて検討、結論を得る。各々の結論については、文化庁において再度権利者や関係者等からの合意を得たうえで、著作権等に係る法的な検討を行い、優先度の高いものから順次制度設計を行い、法案概要を作成する。特に、放送のインターネット同時配信等を著作権法上、放送と同等に扱うことについては丁寧に議論を行う。【1、3については、令和2年8月末まで要望を取りまとめ、令和2年 10 月末までに検討・結論、令和2年 12 月末までに制度設計及び法案概要を作成した上で、令和3年通常国会での法案成立を目指す。2については、1、3を優先的に措置した上で、令和3年中に改めて要否を明らかにする】
- b インターネット配信まで見据えた、放送事業者と権利者が Win-Win の関係となる契約を促す観点から、放送事業者が権利者に支払うべき適切な使用料について議論を行うよう、放送事業者と権利者の間で検討の場が設けられるよう、必要な措置を講ずる。【令和2年度措置】
- c ローカル局によるネット配信の促進に向け、いかなる支援を必要としているかについて、総務省において調査・検討を行い、その結果を踏まえて、例えば、相談窓口の設置、人材支援等、必要な支援策を講ずる。【令和2年度調査・検討・結論、令和3年度措置】
- d インターネット同時配信以外の、その他ウェブキャスティングにおける権利処理の在り方について、総務省においてウェブキャスティング事業者の権利処理における課題・要望を整理し、文化庁がその検討状況を踏まえつつ、集中管理の促進による権利処理の円滑化を図る。【令和2年度検討・結論】
- エ 放送コンテンツの製作取引適正化
- 放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドラインの遵守状況を調査の上、取引の透明性向上や更なる適正化に資する法的措置を含む取引ルール策定やその執行の強化についての検討を踏まえ、ガイドラインを改訂し、制作会社への著作権の帰属や対価について情報成果物作成委託(完全製作委託型番組、その他放送素材)、役務委託の契約形態別に類型化し、雛型の充実を図る等、必要な方策を講ずる。【令和2年度措置】
- オ 放送のユニバーサルサービスの在り方
- a 地上波4K放送を含めた地上波の高度化方式に関して、今後の技術的検討のスケジュールを明らかにする。【令和2年度措置】
- b 今後、ブロードバンドのユニバーサルサービス化の検討も踏まえ、放送ネットワークをブロードバンドにより代替する場合のコストベネフィットの比較考量を行うことを含め、検討を行う。【令和2年度検討開始、早期に結論】