公益事業学会 2024年度 第1回関東部会(2024年7月20日) 予稿(概要)
インターネットを代表する通信ネットワークは重要な社会インフラとなっており、より良い運用や構築、さらには制度的な建付け等、様々な切り口による議論が行われています。また、現在のインターネットにおける通信は、ユーザ間通信は全体の1割もなく、ほとんどがOTT(コンテンツ事業者)とユーザ間の通信となっています。しかし、現状では、ネットワークインフラに関する国内議論において、OTTの知見や視点が生かされておらず、議論自体のレベルが低くなっています。
今回は、まず、以下のようなネットワークインフラ議論における、OTT視点の重要性について概論します:
- ネットワークの品質管理
- 現在の国内議論:速度計測(疑似調査、平均値)
- OTT視点議論:QoE計測(実調査、出現率)
- ネットワークのコスト負担問題(OTT vs ネット)
- 現在の国内議論:定性的
- OTT視点議論:定量的
- ネットワークの最適運用問題
- 現在の国内議論:運用論
- OTT視点議論:構造(CDN構成)論
そして、OTT視点での議論が進まない以下のような原因について分析し、それらに対する対策について議論します:
- OTT
- 国内人員数の少なさ
- コミュニティがない
- 総務省等の委員会に送り出せる大学関係者がいない
- ネットワーク
- CDN(特に広域分散)技術やOTTビジネス収支に対する理解の低さ
- 監督官庁(総務省)
- 縦割り行政(ネットワークはデータ課、OTTはコンテンツ課)
補足:ネットとOTT
通信事業(ISP・キャリア) | ネットビデオ事業(OTT) | |
産業規模 | 約16兆円 | 約1兆円 |
通信コスト負担 | 約10兆円 | 約1,000億円 |
インフラ国内エンジニア数 | 数万人 | 数百人 |
インフラ運用 | ほぼ国内運用 | 9割以上は海外から運用 |
QoS・QoE計測 | 部分的 | 全数調査(大手OTT) |
リンク
- 発表原稿
- 固定ブロードバンドサービスの品質測定手法の確立に関するサブワーキンググループ
- News & Views コラム:インターネット健全性とQoE計測について