なぜNGNのSNIは使えないのか?


NGNが登場して10年以上がたちますが、NGNへのサーバ接続であるSNI(application Server-Network Interface)は、CDN事業者から見ると、その単価が一般Internet配信接続の100倍以上の値付けとなっており、非常に使いにくい(実際には高すぎて使えない)ものになっています。今回はこの裏にある構造的・根本的な原因について、まとめてみたいと思います(SNIが高すぎるのは、単純にNTTが高コスト体質云々という話でないです)。

Internetのコスト負担

一昔前にネットワークインフラのただ乗り議論がありました。その後どうなったかというと、ただ乗りが当たり前になり、現状ではInternetの配信側と受信側のコスト負担は1:100以上になっています。

一つの例として、CDNの国内市場規模はだいたい数百億円、それに対し光回線・モバイル回線・ISP事業等を含めた国内ネット事業の市場規模は8兆円の規模です(市場規模の差は200倍程度)。つまり、CDNのような配信側は国内Internetインフラの維持に対して高々数百億円程度しか費用負担していませんが、受信側のISPやキャリアは8兆円規模の費用負担を行っています。

次にトラフィックのコスト負担について、もう少し細かく見ていきます。最近ではコンテンツ配信においてもIXによるトラフィック交換が多くなっており、この場合以下のような流れでトラフィックが流れます:

  • 配信サーバ⇒IX⇒バックボーン(ISP)⇒ローカルネットワーク⇒ユーザ

この時に配信側の負担するネットワーク費用はIXの接続費用のみで、たとえばBBIXの場合以下の料金です:

  • 100Gbps: 108万円/月

一方、受信側(ユーザ)側はIXの接続費用のほかに、バックボーン(ISP)とローカルネットワークの費用を負担することになります。これらの総額について、ざっくりとした話にすると、外部リンクが100Gbps程度の地方CATV Internetと同程度の費用(10万加入、売上数億円/月)になると思われます。

また配信受信のGB単価という視点で比べると、以下ぐらいが目安になります

  • CDN配信/GB:0.X円(大規模配信では1円/GB以下)~20円(Cloudfrontにおける完全従量料金:CDN配信としては最も高い単価)
  • MNOモバイル網/GB:141円(ドコモ ギガホ2 60GB)~1,000円(ドコモ1GB追加プラン)
    • 消費者向けコミット料金として、実際には使い切らない前提で料金設定されいる

最後にNGNの料金を見てみると、以下となります(注意:SNI、UNIは1Gbpsの料金です)

  • SNI(サーバ接続):1Gbps 280万円/月
  • UNI(ユーザ・ビジネス):1Gbps 4.1万円/月
  • NNI(ネットワーク接続):100Gbps 921万円/月 (東京、大阪)

SNIについて、今どきの配信事業者にとって1Gbpsの値付けは無意味で有り、最低でも10Gbps、通常は100Gbpsの値段が無いと話になりません。そして、NGNという通信路では配信側も受信側も同等にコストを負担するという前提で料金が構成されていると思われますが、Gbps単価について、SNIがNNIよりも高くなっています。また、UNIについては、ビジネスタイプ(加入者あたり1Gbps程度の帯域を目安として網設計されている)で4.1万円/月であり、逆にSNIの1/70程度の値付けとなっています( UNIは(実際には)それほど帯域を使わないのに対し、SNIはぎりぎりまで帯域を使ってくるという算定根拠だと思われます)。

まとめ

端的には、IXなら100Gbpsあたり108万円/月で配信できるのに、NGN SNIだと1Gbpsで280万円/月かかるというのは、あり得ないというお話になります。また、NGN内部の料金でみても、SNI料金はUNIの約70倍となっています。

その裏には、一般Internetでは「ネットワークインフラのただ乗り(1:100程度の費用負担率)」が当たり前になっており、その前提で様々なサービス(VoD、ゲーム等)が存在しているのに対し、NGNは通信路として配信側および受信側に対し平等にコスト負担を求める構造になっているという所にあります。

結論として、配信事業者としてSNIは魅力的な機能ではありますが、その料金体系が今の一般Internetに見合ったものになるまでは使えないと言えます。つまり、昔の放送事業者向け料金のような格安のプランが必要です。また、マルチキャストを使えという意見もありますが、既に一般Internetでは放送型サービスがユニキャストでコスト構造的に成立しており、NGNについても世の中に合わせた料金設定が必要です。

補足:情報元と算定根拠

全体的に鍋島の肌間を数字に置き換えてみたものです。1$は100円換算。市場規模・売上等の数値は後で正確なものに置き換えます。


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