現在、日本ではコードカットは起きていない。今後、「アメリカを追いかける形でコードカットが起きるのか?」要因について分析します
市場規模
ベース:2020年日米比較
- GDP
- アメリカ:23.32兆ドル
- 日本:549兆円
- 世帯数
- アメリカ:1億1,670万
- 日本:5,583万
CATV
日米マルチチャンネルサービスの契約数および市場規模は以下:
- 米国:約6,000万世帯(世帯普及率約5割)、約7.3兆円(524億ドル、GDP比率:0.22%)
- 注意点:最近のコードカットにより、既に3割程度コードカットされている
- 日本:約1,200万世帯(世帯普及率約2.5割)、約6,000億円(GDP比率:0.11%)
- 注意点:CATVサービスの加入者数は約3000万世帯(世帯普及率53%)
マルチチャンネルサービスについて日本は、米国の半分程度の市場規模(普及率、対GDPでの市場比率)であり、コードカットが起きにくい環境である可能性がある。
広告
日米広告の市場規模は以下:
- 米国
- テレビ広告市場:670億ドル(GDP比率:0.29%)
- デジタルビデオ広告市場:471億ドル(GDP比率:0.20%)
- 日本
- テレビ広告市場:18,019億円(GDP比率:0.32%)
- デジタルビデオ広告市場:5,601億円(GDP比率:0.10%)
日本は、まだまだテレビ広告が元気であり、デジタルビデオ広告は出遅れていると言える。また、米国においてもFASTは善戦はしているものの微妙な状況(黒字決算の発表はまだない)であり、明確なビジネス成立(ユーザおよび出稿獲得、サービス黒字化)には、もう少しかかりそうである。日本は、これをさらに数年後追いする形になると思われる。
vMVPD
YouTube TVは米国で好調。これが日本に進出するかが鍵となりそう。
YouTube TVのアドバンテージは以下:
- ベースとなるYouTubeは、国内においても既にメジャーなISP内部に配信サーバを配置しており、配信コストの点で有利
課題は以下:
- 日本では、NetDVR(ネットワーク側でのDVRサービス)の実装方法として、ストレージ共用型が著作権法において許されていない(と言われている)。そのため、YouTube TVは高コストな個別型のNetDVRを使用しなければならない可能性が高い。
また、vMVPD一般の課題は以下:
- 日本では、「地上波放送が再送信向けにすべて権利処理されいる」わけではなく、再送信できない番組が多い。
- 日本では、「テレビ局が放送をvMVPDに再送信させるか?」について前例が無く、契約がまとまるか不明である。ただし、日本においてもテレビ局はCATVに再送信を許しており、基本的には同じような形で許可を出す可能性が高いと思われる。
- NHKについては、NHK法の縛りがあるため、無条件の再送信は難しいと思われれる。例えば、NHK受信料を支払っているユーザのみに再送信を行う等の制限が必要になる可能性が高い。
- 日本では、米国に比べ「ケーブルチャンネルでしか見れないコンテンツが少ない」と言われている(そのためCATVマルチチャンネルの普及率が低い)。コードカットしたユーザは、vMVPDに乗り換えるのではなく、そのままマルチチャンネルを止める可能性がある。
FAST
日本におけるFASTの課題は以下:
- 前述のように日本のデジタルビデオ広告は米国の半分程度の市場しかない。広告出稿側の意識改革(オンラインメディアへの積極出稿)が必要。
- 海外FASTの日本進出にあたり、言語の日本語化が必要になる。実際、複数の国でサービスしている大手FAST事業者が、このコストのために日本進出を見送ったという噂がある。
- テレビ局が、現在の所、FASTサービスを提供していない。ただし、各社ともにオンラインでの広告売上に興味をもっており、米国の数年遅れぐらいで活性化する可能性がある。