私的均衡の非効率性(ISP vs OTT)


私的均衡の非効率性とは

外部性が存在すること等により、市場が効率的に運営されないこと。

外部性とは

ある経済主体が財・サービスを生産したり消費したりする行為が,市場機構を媒介することなく、他の経済主体に対して付随的な効果及ぼす現象であり、以下の二つがある:

  • 正の外部性
    • 影響を受ける主体にとって望ましい場合
  • 負の外部性
    • 影響を受ける主体にとって望ましくない場合

参考資料

現状

ネットワーク関連サービスにおける外部性

IX等が責任分界点となるため、OTTおよびISPにおいて外部として扱われる事項は以下となる:

  • OTTからみた外部性の源
    • IXの先のISPネットワーク
  • ISPから見た外部性の源
    • IXの先にあるOTTのサービス

社会的には、「このような外部性が存在するなかで、ネットワークをどう最適に維持するか?」という問題となる。これを、具体的・技術的に言うと「外部性を考慮したネットワーク最適化(維持コストの最小化)問題」であると言える。

補足:ここからの整理には、金銭的外部性も含める。

正の外部性

  • OTT側
    • ネットワークを安く使えるため、ネット映像サービスが成立し、旧来のレンタルビデオ時代よりも大きな市場を得られた
  • ISP側
    • ネットワークへの需要が高まり、売上が増えた
      • 固定網の光ファイバ、モバイル網の無制限プランへの加入が増えた

負の外部性

  • OTT視点(ISPへの要望)
    • ネットワーク費用が高いため、取り込めないユーザがいる
      • モバイルはこなれてきたが、まだ高い
      • 固定系はADSLが廃止となり、光ファイバーのみとなった。しかし、一部事業者の寡占によりファイバー料金は下がらない
    • QoEが悪いISPに対して、改修をお願いしたいが方法がない
    • ISP側でトラフィック操作(ペーシングその他)が行われており、特定条件でQoEが低下する場合もある
    • NGN:最適配信には以下の事項が必要だが、NTTは新規収入が見込めないため実施しようとしない
      • SNIの値下げ(これが可能になれば、県単位ぐらいでの分散配信が可能になる。ただし、100分の1以上の値下げが必要である)
      • 配信事業者向けNNIの新設(これが可能になれば、全国に14か所あるVNE用POIから分散配信が可能になる。ただし、NNIについては経路処理等における改修が必要である)。
  • ISP視点(OTTへの要望)
    • OTTから流れ込んでくるトラフィックが多すぎて、設備投資が間に合わない
    • 最適配信(ISP内部からの配信や複数拠点の使用)を行わないOTT事業者がいる
    • コンテンツについて、映像品質が不必要に高い(スマホ向けなら720Pで十分)、もしくは、圧縮を頑張っていない可能性がある(フルHDであれば、OTT側で頑張って2Mbps程度まで圧縮して欲しい)。

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